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PDB:3klr

タンパク質名

ウシ由来 H-protein

生物種

ウシ(Bovine)

生物学的役割

近年、X線結晶構造解析の様々な技術の発展により非常に多くのタンパク質の立体構造が明らかにされてきた、それに伴いX線結晶構造解析における分解能とその構造の質は徐々に向上している。分解能の向上に伴い、異方性温度因子の導入、蛋白質主鎖・側鎖のマルチコンフォメーションや溶媒分子のモデル化、水素原子の可視化など、精度の高い構造精密化を行うことが可能となる。しかし、0.9Å分解能を超える様なX線結晶構造は全体の0.2%程度であるため、より多くの構造解析例が求められている。今回、グリシン開裂酵素系Bovine由来H-proteinを高分解能X線結晶構造解析のモデルタンパク質とした。グリシン開裂系はミトコンドリアで機能する4種類のタンパク質(P-, H-, T- と L-protein)から構成される複合酵素系であり、グリシンの分解反応を触媒する。この系は哺乳類、植物やバクテリア等に広く分布している。H-proteinはこの系で中心的な役割を果たしている。リポ酸がH-proteinの特定のリシン残基と共有結合を形成し、他の構成タンパク質P-, T-, L-proteinと相互作用し機能する。

立体構造の特徴

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Bovine H-proteinの立体構造をX線結晶構造解析の手法により0.88Å分解能で決定した。Bovine H-proteinは2組の逆平行ベータシートからなるメインドメインとC末端のヘリックスがリンカーで繋がれた立体構造をしている。125残基中29残基のマルチコンフォメーションをモデル化することができ、約40%の水素原子の観測が可能であった。

高分解能のX線回折データ収集にではハードウェアの限界のために、測定条件の異なる複数回の実験が必要となる。今回は高分解能のデータ収集を3段階で行った。これらデータの組み合わせにより水素原子の見え方に違いが現れ、低分解能領域のデータが水素原子の可視化に重要であるということを実験データから確認することができた(図)。

(図)2Fo-Fc (青) と Fo-Fc (正電荷部分は緑、負電荷部分は赤) の電子密度マップ。緑の塊は水素原子を示す。

タンパク質構造データバンク(PDB)

参考文献

原論文

  • Higashiura, A. , Kurakane, T. , Matsuda, M. , Suzuki, M. , Inaka, K. , Sato, M. , Kobayashi, T. , Tanaka, T. , Tanaka, H. , Fujiwara, K. , Nakagawa, A.; "High-resolution X-ray crystal structure of bovine H-protein at 0.88 Angstrom resolution."; Acta Crystallogr.,Sect.D; (2010) 66:698-708.

その他

著者: 東浦 彰史


English version:PDB:3klr