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PDB:3aag

タンパク質名

オリゴ糖転移酵素

生物種

カンピロバクター(食中毒細菌)

生物学的役割

タンパク質の翻訳後修飾として糖鎖修飾は最重要な生命現象に位置づけられます.中でもアスパラギン残基への糖鎖修飾(N型糖鎖修飾)はその代表例です(図1).

オリゴ糖転移酵素は新生ポリペプチド鎖のAsn-X-ThrまたはAsn-X-Serコンセンサス配列に糖鎖を転移する反応を触媒する.
図1.オリゴ糖転移酵素は新生ポリペプチド鎖のAsn-X-ThrまたはAsn-X-Serコンセンサス配列に糖鎖を転移する反応を触媒する.

N型糖鎖修飾反応は100種以上のタンパク質が関係する非常に複雑なシステムですが,タンパク質と糖鎖の出会いを仲介しているのは,ただ1つの酵素で,オリゴ糖転移酵素と呼ばれる膜タンパク質複合体です.N型糖鎖修飾は一般には真核生物にのみ存在すると思われていますが,実際は真核生物だけではなく,真正細菌の一部にも存在します.また,第3の生物と言われる古細菌にも広く見られます.オリゴ糖転移酵素は,高等真核生物では複数のサブユニットからなりますが,下等真核生物,古細菌,真正細菌では単一のサブユニットだけからなります.

オリゴ糖転移酵素はN型糖鎖修飾反応の中心的な存在として,世界中で構造決定が試みられてきました.しかし,ヒトや酵母のタンパク質を対象にしていたために成功例はありませんでした.また,オリゴ糖転移酵素は膜タンパク質なので全体構造の決定は大変困難です.そこで,生物種の対象を広げることと,可溶性のドメイン部分の構造決定を目指すことにしました.その結果,古細菌パイロコッカス由来のオリゴ糖転移酵素の可溶性球状ドメインの構造決定に成功しました.次いで,真正細菌であるカンピロバクター由来のオリゴ糖転移酵素の可溶性球状ドメインの構造決定を行いました.

立体構造の特徴

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2つの立体構造を比較すると,パイロコッカスのタンパク質にβシートからなる余分な構造(P1とP2と命名)があることがわかります(図2).

真正細菌カンピロバクター由来のオリゴ糖転移酵素と古細菌パイロコッカス由来のオリゴ糖転移酵素の可溶性球状ドメインの立体構造の比較
図2.真正細菌カンピロバクター由来のオリゴ糖転移酵素と古細菌パイロコッカス由来のオリゴ糖転移酵素の可溶性球状ドメインの立体構造の比較

これはアミノ酸配列としてパイロコッカスの方がかなり長く,余分な部分がP1とP2に対応しています.残りの共通な部分(青色)にはβバレル様の構造(ISドメインと命名)が存在しています.アミノ酸配列の比較だけではこのβバレル様の構造が共通して存在することは事前に予想できませんでした.構造決定に成功した2つのタンパク質は進化上遠縁にあたるので,アミノ酸配列にはほとんど共通性がありませんが,活性部位周辺の立体構造はよく似ていました(図3).

活性部位と予想される部位のクローズアップ
図3.活性部位と予想される部位のクローズアップ

2つの活性部位の構造の比較から,酵素活性に関与していると予想される新しいアミノ酸配列モチーフを見つけました.このモチーフは長いヘリックス(図3の薄茶色のらせん構造)に存在し,古細菌パイロコッカス酵素ではDxxKxxxI(Dはアスパラギン酸,Kはリジン,Iはイソロイシン,xは任意のアミノ酸),一方,真正細菌カンピロバクター酵素ではMxxIxxxV(Mはメチオニン,Iはイソロイシン,Vはバリン)というアミノ酸配列です.これらのアミノ酸を他のアミノ酸に置換して酵素活性を測定したところ,予想通り活性が低下し,酵素の触媒機能に重要な役割を果たしていることが証明されました.

タンパク質構造データバンク(PDB)

関連PDB

参考文献

  • Maita, N. Nyirenda, J. Igura, M. Kamishikiryo, J. Kohda, D.; "Comparative structural biology of Eubacterial and Archaeal oligosaccharyltransferases."; J.Biol.Chem.; (2010) 285:4941-4950 PubMed:20007322.
  • Igura, M, Maita, N, Kamishikiryo, J, Yamada, M, Obita, T, Maenaka, K, Kohda, D.: "Structure-guided identification of a new catalytic motif of oligosaccharyltransferase"; EMBO J; (2008) 27:234-243 PubMed:18046457.

その他

著者: 神田 大輔


English version:PDB:3aag