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PDB:3BG0

タンパク質名

Sec13-Nup145C8量体 (核膜孔のコート構造)

生物種

ヒト(Sec13)、酵母(Nup145C)

生物学的役割

核膜孔複合体 (nuclear pore complex, NPC)は、高分子が核と細胞質との間を行き来するのを仲介する。例えば、核で合成されたRNAの細胞質への輸送、細胞質で翻訳された核タンパク質の核への輸送、核-細胞質を行き来するシャトルタンパク質の輸送などはNPCを介して行われている。NPCは真核細胞の中で最も大きな超分子複合体の1つであり、ヌクレオポリン (nucleoporin, nup)と呼ばれる約30個の異なるタンパク質から成る。真核生物の機能を保持するためにNPCは重要な分子装置であるが、あまりにも巨大な複合体であるため未だ不明な部分も多い。

電子顕微鏡の画像再構成法から、NPCは核細胞膜軸に対し8回回転対称性があり核膜平面においても対称性を持つ円筒構造であることが明らかになった(Beck et al., 2004)。また、NPC複合体の一部分としてNup84 7量体が報告されている(図1、Lutzmann et al., 2002)。これらの知見と今回の結晶構造により、Nup84 7量体は核内膜-核外膜間の核膜孔を支える覆い(コート)のような役割を果たしていることが示唆される。

seven_nups (図1) Nup84 7量体の模式図
NPCのサブ複合体であるNup84 7量体の模式図。電子顕微鏡画像を元に再構成された。(Lutzmann et al., 2002)

今回の結晶構造の構成分子であるSec13、Nup145の大まかな位置を水色で示す。

立体構造の特徴

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核膜孔複合体の構成成分(nup)であるSec13とNup145Cがヘテロ8量体を形成する結晶構造が決定された。それは全長285Åの棒状の構造で、やや曲がっている(図2)。このSec13-Nup145C複合体は3つの対称軸を持っている。中心のSec132量体形成部分で対称、また上下に4量体として分けるとNup145Cの二量体形成部分でそれぞれ対称になっている。Nup145Cは今までに知られていない新しい折りたたみ構造を持っており、その形はU字型をしている。Sec13はプロペラ状にβシートが配置する構造であることはすでに報告されている(βプロペラ)。今回Nup145C-Sec13ヘテロ2量体を形成する際に、Nup145CのN末端部分の3本のβストランドが第7の翼としてSec13のβプロペラに組み込まれていることが分かった(図3)。

hetero_octamer (図2) Sec13-Nup145Cヘテロ8量体
Sec13-Nup145Cヘテロ8量体のリボン表示。Sec13を黄色とオレンジ色、Nup145Cを緑色と青色で示す。右の図は90度回転させたものである。Sec132量体(黄色)の中心部分に回転対象の軸がある。また上下に分けた場合、それぞれNup1452量体(緑色と青色)の間にその4量体の回転対称軸がある。
beta_propeller (図3) βプロペラ
Sec13のβプロペラ(黄色)とNup145CのN末端(青色)が相互作用する。プロペラの翼はそれぞれ4つのβストランドから成り,Sec13の場合6枚の翼がある.Nup145CのN末端にある3本のβストランドが空いている部分に入り込み,第7の翼となる.

このヘテロ8量体の構造と、報告されている電子顕微鏡解析(Beck et al., 2004)より、Nup84 7量体(図1)がどのように円筒状のNPCの中に組み込まれているのかを提唱する(図4)。Nup84 7量体は8個連なって環を作る。それが、逆平行に積み重なって4層の環(円筒)になる。その際に、Sec13-Nup145Cヘテロ8量体形成がこの円筒を横断する形で4層を固定し、NPC全体の安定化に寄与すると考えられる。このコート円筒の内部に同心円状にアダプター円筒、チャネル円筒が存在すると予想されている。

model_of_NPC_core (図4) NPCコアのモデル
NPCコア部分は同心円状に何層も円筒が重なるというモデル.

Nup847量体が8つ連なり環を形成する.図の赤い四角で囲まれた4ブロックが図1の4区画に対応し,矢印の最初がSeh1,Nup85の区画,最後がNup133に相当する.7量体は環の中では同一方向に配置し,隣り合う環では逆方向になる.それで膜平面における対称性が成立する.

今回の結晶構造は黒枠の青色4ブロックに相当する.1ブロックがSec13-Nup145C2量体である.NPCのコート円筒はこのような青色の柱が8本配置され,8回回転対称の構造になっている.この円筒の直径は約1000Åである.

タンパク質構造データバンク(PDB)

参考文献

原論文

  • Hsia, K.C. Stavropoulos, P. Blobel, G. Hoelz, A.; "Architecture of a coat for the nuclear pore membrane."; Cell(Cambridge,Mass.); (2007) 131:1313-1326 PubMed:18160040.

その他

著者: 藤田直也


English version:PDB:3BG0