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PDB:2ic8

タンパク質名

ロンボイドプロテアーゼ GlpG

生物種

大腸菌 (Escherichia coli)

生物学的役割

細胞膜中で働くセリンプロテアーゼ

ロンボイド(rhomboid)プロテアーゼ・ファミリーに属する加水分解酵素の1つ(EC: 3.4.21.105)で、複数本の膜貫通ヘリックスからなる膜蛋白質。活性部位は膜貫通ヘリックス上にあり、細胞膜内で他の蛋白質の膜貫通ヘリックスを切断する。活性残基としてSer(セリン)とHis(ヒスチジン)を含むので、広義のセリン・プロテアーゼの1種といえるが、トリプシンなど代表的なセリン・プロテアーゼがall-β型のフォールドをもち、活性残基をβストランドの上にもつのに対し、ロンボイド型は細胞膜中に埋没したαヘリックスのみからなる。ロンボイドプロテアーゼは、原核生物から真核生物までの広い範囲の生物種に分布し、その役割は多様で生物種ごとに異なるようである。例えば、ショウジョウバエの Rhomboid-1はEGF 受容体の膜貫通ヘリックスを切断してシグナル伝達を制御する。ヒトのホモログ酵素Pcp1は、アポトーシスのさいにcytochrome cがミトコンドリアから細胞質側へ放出される一連の動きに関与するとされる。ロンボイドプロテアーゼのX線結晶解析は、膜を構成する脂質二重層という完全な非水環境において、どのようにして加水分解反応が可能なのか、という興味深い問題を明らかにした。

立体構造の特徴

2ic82ic8_x2ic8_y

GlpG は6本の膜貫通ヘリックス(S1〜S6)をもつが、ヘリックスS4は膜を完全に貫通せずに、ヘリックスの一端(N端)が膜表面から約10Å 下の位置に留まる。そのため膜中に空洞(キャビティ)を生じる(図1、2)。このキャビティは細胞外に向かって開いていて内部は水溶性である。また、ヘリックスS1とS2は27残基からなる比較的長いループL1によってつながっているが、予想に反してL1は膜中に埋没している(図1、2)。これら2つの構造的特徴は、以下のように、いずれもこの酵素の機能に関係している。活性残基のSer-201とHis-254はそれぞれヘリックスS4とS6上にあって、側鎖はキャビティと接する側にある。その近傍には水素結合でむすばれた数個の結合水も見えている。加水分解の際にはこれらの水分子が使われるものと思われる。原論文[1]によると、キャビティの側面はループL1によって塞がれているが、基質となるタイプ1膜貫通ヘリックスがキャビティに近づくと、L1は構造変化しながら基質ヘリックスをキャビティ内に導入する、と推定されている。さらに、基質ヘリックスはキャビティ内に導入された部分がほどけて、加水分解を受け切断されると考えられている。

タンパク質構造データバンク(PDB)

参考文献

原論文

  1. Wang, Y. , Zhang, Y. , Ha, Y.; "Crystal structure of a rhomboid family intramembrane protease."; Nature; (2006) 444:179-180 PubMed:17051161.

その他

著者: 西川 建


English version:PDB:2ic8