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PDB:2efd

タンパク質名

ARA7とVPS9a の複合体

生物種

シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)

生物学的役割

低分子量GTPaseは、GTP結合型とGDP結合型の構造の違いを利用する分子スイッチである。その制御には主に4つの因子が関わっている。不活性型であるGDP結合型から活性型であるGTP結合型への変換は、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)により行われる。活性型の低分子量GTPaseは、エフェクターと呼ばれる標的蛋白質との相互作用を介して機能する。活性型から不活性型への変換は、自らのGTPase活性とGTPase活性促進蛋白質(GAP)により行われる。こうして生じた不活性型の低分子量GTPaseはGDP解離阻害因子(GDI)と複合体を形成することで、エフェクターと相互作用できない状態が保たれる。GDI除去因子(GDF)によりGDIが外されると、GEFが作用できるようになり、上記に戻りサイクルが完成する。

小胞輸送においては各種Rab低分子量GTPaseが関与し、特にエンドサイトーシスにはRab5が関わる。シロイヌナズナにはARA6、ARA7、RHA1という3つのRab5が知られている。小胞輸送を理解する一環として、我々はシロイヌナズナ由来Rab5のGEFであるVPS9aの機能・構造解析を行っている。近年、多くのGTPあるいはGDP結合型低分子量GTPaseの単体構造や、GEFとの複合体構造が明らかにされているが、未だGEF反応のメカニズムには不明な点が多い。今回我々はARA7とVPS9aのヌクレオチドフリー型二者複合体、そしてヌクレオチド(GDP, 又はGDPNH2)を含む三者複合体の結晶構造を明らかにした。Vps9ドメインに完全に保存されたGEF活性に必須のアスパラギン酸 (Aspフィンガー)がGDPとの静電的反発を利用してヌクレオチド交換を行うと考えられていたが、ヌクレオチドを含む三者複合体では、静電的反発とは逆に、水素結合によるヌクレオチド認識が示された。一方、全ての複合体において、低分子量GTPaseのP-loopに完全に保存され、ヌクレオチドのβ位のリン酸を認識するリジンの側鎖がAspフィンガーと相互作用していることから、このリジンとAspフィンガー、そしてGDPの間の静電的競合が示唆された。ARA7とVPS9aの二者複合体および三者複合体結晶構造は、GEFによるヌクレオチド交換メカニズムの理解に寄与すると期待される。

立体構造の特徴

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1. Aspフィンガー

Vps9ドメインに完全に保存されたAspフィンガーは、ArfのGEFであるSec7ドメインで同様の働きをするグルタミン酸、Glu フィンガーに倣って名付けられた。AspフィンガーやGlu フィンガーのように、酸性残基を活性中心に持つGEFは、酸性残基とGDPとの間の負電荷同士の静電的反発を利用してヌクレオチド交換を行うと考えられていた。しかしながら、ヌクレオチドを含むARA7とVPS9aの複合体結晶構造から、AspフィンガーがGDPを水素結合により直接認識する中間体の存在が明らかとなり、GEFによるヌクレオチド除去が単純な静電的反発だけでは説明できない可能性が示された。

2. GDP除去のメカニズム

酸性アミノ酸フィンガーが静電的反発によりGDPを追い出すのではないとすると、どのようなGDP除去のメカニズムが存在しうるだろうか?AspフィンガーとGDPのβ位のリン酸の間に水素結合が確認されている一方、Aspフィンガーは低分子量GTPaseのP-loopに保存されているリジンとイオンペアを形成することも観察されている。単量体低分子量GTPaseにおいては、P-loopリジンはGDPとイオンペアを形成し、同じくP-loopに保存されたセリン/スレオニンとGDPに同時に配位するマグネシウムイオンと共に、低分子量GTPaseとGDPの結合の中心を担うが、このP-loopリジンに対してGDPと競合するのがAspフィンガーであり、水素結合を介してGDPとの共存を図りつつ、P-loopリジンをGDPから奪い、GDPの低分子GTPaseへの親和性を低下させるというGDP除去モデルを模式図に示す。マグネシウムイオンやリジンなどの正電荷はGDPの水素化pKaを低下させ、GDPの酸性度を上昇させる影響があると考えられるが、これら正電荷をGEFが順次GDPから外すことにより、GDPの水素化が行なわれる可能性が考えられる。この水素化により、GDPとAspフィンガー間の静電的反発が抑えられ、つまりGEFとその基質であるGDP型低分子量GTPase間の相互作用が強められ、P-loopリジン、GDP、そしてAspフィンガーの共存が可能となり、効果的なヌクレオチド交換反応が進行するのかもしれない。今回の結晶構造解析にはマグネシウムイオンは含まれておらず、GEFによるヌクレオチド交換反応の全容を理解する次のステップとして、如何にGEFがGDP型低分子量GTPaseからマグネシウムイオンを除去するのか調べる必要があろう。

タンパク質構造データバンク(PDB)

参考文献

原論文

  • Uejima, T. Ihara, K. Goh, T. Ito, E. Sunada, M. Ueda, T. Nakano, A. Wakatsuki, S.; "Recognition of Rab5-GDP by guanine nucleotide exchange factor of plant Rab5 prior to GDP release"; To be Published; () :-.

その他

著者: 上島 珠美、伊原 健太郎


English version:PDB:2efd