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PDB:2NPP

タンパク質名

タンパク質脱リン酸化酵素2A

生物種

ヒト

生物学的役割

タンパク質のリン酸化、脱リン酸化の制御は、細胞機能の全ての面に関わる根本的な調節方法である。タンパク質脱リン酸化酵素2A (Protein Phosphatase 2A, PP2A) は、代表的なセリン/スレオニン脱リン酸化酵素で、細胞生理の多くの面で重要な役割を果たす。セリンあるいはスレオニン側鎖のリン酸化/脱リン酸化により、膜を介するシグナル伝達やシグナルの細胞内での増幅、細胞周期の調節が行われる。
また、PP2Aは重要な腫瘍抑制タンパク質でもある。PP2Aを構成するサブユニットの1つ、足場サブユニットの変異がヒトの原発腫瘍と関連性があるという報告が幾つかされている。変異がサブユニット間の相互作用を阻害、ひいてはPP2A全体としての機能を低下させると考えられ、それらの理解を進める上でも結晶構造は有用である。

立体構造の特徴

2npp2npp_x2npp_y

PP2Aはへテロ三量体のホロ酵素で、足場(scaffolding)サブユニット、触媒サブユニット、調節サブユニットから成る。足場サブユニットと触媒サブユニットはコア酵素を形成し、その構造は既に報告されている (PDBjMine:2IE3)。また、調節サブユニットは多様で、少なくとも16種類は存在し、それらは4つのサブファミリーに大別される。
今回、調節サブユニットを備えたホロ構造が明らかになった。驚くべきことに、調節サブユニットは足場サブユニットと似ており、HEAT-likeリピートを持つ(図1)。調節サブユニットは疎水性の凸面で足場サブユニットと接触し、HEATリピートのループ部分で触媒サブユニットと接触している(図2)。よって、凹面の負電荷が複合体表面に露出したままであり、その部分で基質タンパク質を認識する可能性が考えられる。また、コア酵素からホロ酵素になる過程で、足場サブユニットは構造変化を起こし、L字型からC字型になる。その切り替え点は11番目のHEATリピートにある。
従来は、ホロ酵素形成の上で触媒サブユニットのC末端メチル化が重要であると考えられてきたが、必須というわけではないことが分かった。今回、C末端15残基を切断した触媒サブユニットでもホロ酵素の結晶構造が得られたからである (PDB:2NYMPDBjMine:2NYL)。
今後、構造を元にPP2Aの機能や制御機構についての研究が進むことが期待される。

HEAT_repeat, (図1) HEATリピート

調節サブユニットの4番目のHEATリピート(LEU186~ASN223)。

HEATリピートは二つの逆方向αヘリックスとその間のループから成る。
PP2A (図2) PP2Aの構造

PP2Aは足場サブユニット(赤)、触媒サブユニット(青)、調節サブユニット(黄)で構成されるホロ酵素。

足場サブユニットは15個、調節サブユニットは8個のHEATリピートを持つ。

タンパク質構造データバンク(PDB)

参考文献

原論文

  • Xu, Y. Xing, Y. Chen, Y. Chao, Y. Lin, Z. Fan, E. Yu, J.W. Strack, S. Jeffrey, P.D. Shi, Y.; "Structure of the protein phosphatase 2A holoenzyme"; Cell(Cambridge,Mass.); (2006) 127:1239-1251 PubMed:17174897.

その他

  • PDB:2NYM PP2A (C末端除去された触媒サブユニットを持つ)
  • PDBjMine:2NYL PP2A (C末端除去された触媒サブユニットを持つ)

著者: 藤田 直也


English version:PDB:2NPP