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PDB:2HVQ

タンパク質名

RNAリガーゼRnl2/AMP 複合体

生物種

バクテリオファージT4(ウイルス)

生物学的役割

ポリヌクレオチドリガーゼは様々な生物に広く見られる酵素で、 核酸鎖の切れた部分にリン酸ジエステル結合を形成して鎖をつなぎ直し、 核酸の損傷を修復する働きを持つ。 この酵素は、基質特異性の違いによってDNAリガーゼとRNAリガーゼの2つに大別できるが、 どちらも下記3つの反応過程を経る点では共通している。

  1. リガーゼとATPが反応し、リガーゼ-AMP複合体とピロリン酸(PPi)ができる。
  2. リガーゼ-AMP複合体が基質ヌクレオチド鎖切断部の5'リン酸端に作用し、 5'リン酸にAMPを付加する。
  3. 切断部の3'OHが5'リン酸に作用し、リン酸ジエステル結合が再生されて、AMPは解離される。

2本鎖RNAを基質とする、バクテリオファージT4のRNAリガーゼRnl2では、 ポリヌクレオチド鎖の切れ目の3'OH側2ヌクレオチドに限ってRNA特異性があり、ここをDNAに置き換えると触媒活性が大きく低下する。 これまでこの特異性に関する仕組みは明らかになっていなかった。

Rel2は、 DNAリガーゼと類似性があるN末端側の「アデニル酸転移酵素ドメイン(Nドメイン)」と、 RNAリガーゼ特有なC末端側の「Cドメイン」との2ドメインで構成されている。 この特有なCドメインは反応の第2段階に不可欠であり、 各反応段階における構造的な変化を明らかにすれば、基質特異性についての知見も得られるものと考えられる。

立体構造の特徴

2hvq2hvq_x2hvq_y

ここに示す構造は、バクテリオファージT4のRNAリガーゼRnl2とAMPの複合体で、 N末端側ドメインにあるLys35にAMPが結合したものである。 この構造は、3つ反応段階のうち最初の段階の生成物に当たる(図1)。

"PDB_2HVQ_Rnl2_with_AMP"

図1:バクテリオファージT4のRnl2にAMPが結合したもの。AMPが結合しているLys35は棒で、AMPは棒と球で、その他はリボン表現で示した。Rnl2のC末端、N末端をそれぞれCとNの文字で示している。

Cドメインは、4つのαらせんから構成されているドメインで、 第2段階のAMPをリガーゼからポリヌクレオチド鎖に転移する反応に欠かせない。 このドメインは、基質のポリヌクレオチドとも、N末端側ドメインとも接触しないが、 隣接するRnl2に結合するポリヌクレオチドに接触している。

N末端側のアデニル酸転移酵素ドメインは、 第1段階では、AMPと結合する部分(アデニル酸結合ポケット)を提供し、 第3段階では、ポリヌクレオチドの切れ目の3'OHがリン酸に求核攻撃を行いやすくなるような立体配置を提供する。

著者は第2段階の生成物(PDBjMine:2HVRの複合体A)と第3段階の反応物(PDBjMine:2HVRの複合体B)についても構造を報告し、比較して反応機構の考察を行っている。

反応第1段階(図2)では、6つのモチーフから構成されるアデニル酸結合ポケットにATPが収まり、 ATPのαリン酸がリガーゼのN末端側ドメインのLys35に結合して、ピロリン酸(PPi)が解離される。 この反応には、金属イオン(Mg2+)と結合ポケットの活性中心残基(Arg55,Glu99,Phe119,Glu204,Lys227)が必須である。

"Step1_product_of_Rnl2"

図2:反応第1段階生成物(当エントリー)のN末端ドメイン部分の構造。 AMPは球棒表現で、AMPと結合しているLys35は白い棒で、活性中心残基はピンクの棒で、それ以外のN末端ドメインは灰色のリボン表現で示した。 なお、活性中心部分を見やすくするため、手前にある一部の残基は表示を省略している。

第2段階では、Arg55が必須で、ポリヌクレオチド鎖の切れ目認識を行い、AMPを切れ目の5'リン酸に転移できるようにしている。

"Step2_product_of_Rnl2"

図3:反応第2段階生成物(PDBjMine:2HVRの複合体A)のN末端ドメイン部分の構造。 必須残基(Arg55)はピンクの棒で、それ以外のN末端ドメインは灰色のリボン表現で、 鋳型ヌクレオチド鎖は青の棒表現で、結合対象となるヌクレオチド鎖の5'リン酸側鎖は橙色の棒表現で、3'OH側鎖は黄色の棒表現で示した。 但し、3'OH側に面するヌクレオチドである3'デオキシリボシチジン1リン酸(3'dCMP)は紫の棒で、その隣の2'メチルリボ1リン酸(2'OMeCMP)は赤紫の棒でそれぞれ表現した。 図2と比べると、AMPがLys35から離れ、5'リン酸側鎖に接近していることが分かる。 なお、活性中心部分を見やすくするため、手前にある一部の残基は表示を省略している。

第3段階では、Lys35,Arg55,Lys227が接触していたリン酸から離れることで、切れ目の5'リン酸とAMPのリン酸で形成されるピロリン酸が回転し、切れ目の3'OHからの求核反応に適した構造を提供している。

"Step2_product_of_Rnl2" "Step3_substrate_of_Rnl2"

図4:Rnl2のN末端側ドメインとヌクレオチド鎖の複合体の、ヌクレオチド鎖切れ目付近の拡大図。色と表現方法は図3と同じ。 ヌクレオチド切れ目の3'OHが求核攻撃の対象とするリン酸無水結合は他より太い線で示している。a)反応第2段階の生成物(PDBjMine:2HVRのA) b)第3段階の反応物(PDBjMine:2HVRのB)。a)に比べb)は、Arg55とLys227がdCMPとAMPのリン酸からそれぞれ離れ、AMPのリン酸が3'dCMPとは反対側に回転して結合反応が進みやすい配置になっている。

この際、切れ目に接した3'OH側の糖を2'デオキシリボースにすると第3段階の反応速度は大きく低下する。 これは2'エンドパッカー構造を取る2'デオキシリボースが、切れ目の3'OHを解離するAMPの方に押しやってしまい、5'側リン酸に求核攻撃するのが妨げられているためと考えられている。 このことを確かめるため、切れ目の3'OH側の糖を3'デオキシリボースにしたもの(PDBjMine:2HVS)と比較を行っているが、こちらでは反応速度の低下は見られなかった。こちらは3'エンドパッカー構造をとり、2'デオキシリボースで見られたような構造的阻害が発生しないためと考えられる。

図5:3'エンドパッカー構造を取るリボース(右)と、2'エンドパッカー構造を取る2'デオキシリボース(左)の構造をそれぞれ棒表現で示したもの。 3'OHを見ると、前者ではが5員環平面に沿った外側を向いているのに対し、 後者では5員環平面に垂直に上を向いていることが分かる。

タンパク質構造データバンク(PDB)

参考文献

原論文

  • Nandakumar, J. Shuman, S. Lima, C.D.; "RNA Ligase Structures Reveal the Basis for RNA Specificity and Conformational Changes that Drive Ligation Forward."; Cell; (2006) 127:71-84 PubMed:17018278.

その他

著者: 工藤 高裕


English version:PDB:2HVQ