RSS

PDB:2H13

タンパク質名

ヒストン修飾タンパク質WRD5/ヒストンH3 複合体

生物種

ヒト

生物学的役割

真核生物のゲノムDNAのほとんどは核中でクロマチン(染色質)として圧縮/貯蔵されている。クロマチンの構成単位はヌクレオソームとよばれ、146bp(146塩基対)のDNAがヒストン八量体に1.75周巻きついたものである(Fig.1)。ヌクレオソームがビーズのようにつながった繊維状のものが、コイルを巻いて凝縮したものがクロマチンである。ヒストン八量体は、コアヒストンであるH2A、H2B、H3、H4の各二分子が結合した複合体である。H3やH4のN末端付近の20~30残基のペプチドはヒストンテールと呼ばれ、メチル化、リン酸化、アセチル化などの化学修飾を受ける。この修飾パターン(ヒストンコードとよばれる)により、クロマチンは様々な機能を発現する。例えば、H3-K4(H3の4番目のリジン)のメチル化は遺伝子の転写促進に、H3-K9(H3の9番目のリジン)のメチル化は遺伝子の転写抑制に働くことが知られている。また、H3-S10(H3の10番目のセリン)のリン酸化は細胞分裂に関係していることも知られている。ヒストンコードを自由に制御することは、任意の遺伝子の発現の活性化、不活性化につながる。そのような訳で、ヒストンコードに関与するタンパク質は盛んに研究されている。WDR5(WD40繰り返し構造)タンパク質もその一つである。 WDR5はTRX(ヒストンメチル基転移酵素複合体)のサブユニットであり、ヒストンH3のK4me2(ジメチル化された4番目のリジン)に選択的に結合する。そして、TRXをH3へ呼び寄せ、TRXによるK4me2のトリメチル化を促進すると考えられている。

closeup
(Fig.1) ヌクレオソーム

立体構造の特徴

2h132h13_x2h13_y

今回得られた構造は、WDR5(22-234)とヒストンH3のK4me2周辺ペプチド(10残基)の複合体である(Fig.2)。このタンパク質は全体として、7個のWD40繰り返し構造(βプロペラと呼ばれる)を含んでいる。各WD40は4本の鎖から成る逆平行βシートで構成されており、プロペラの羽根のように見える。7つのWD40はほぼ同じ構造であるが、6番目のWD40だけは他のものと少し構造が異なっている。一方、H3ペプチドは3-10らせん構造(3残基で1巻きする右巻きらせん構造)をとっている。H3ペプチドのN端側は7つのWD40の中央に形成された窪みの中におさまっており、この部分で一連の水素結合とファンデルワールス結合によりWDR5に固定されている(Fig.3、Fig.4)。従来の予想に反して、H3ペプチドのK4me2は溶媒側に露出しており、WDR5と直接相互作用を持たないことが判明した。それよりも、R2とT3(ヒストンH3の2番残基アルギニンと3番残基スレオニン)がWDR5と多くの相互作用を持っている。アミノ酸置換実験によると、H3ペプチドのA1(1番残基アラニン)、R2、T3の先頭3残基を別の残基に置換すると、WDR5はH3に結合しないことが報告されている。また、H3ペプチドのK4のメチル化の度合(何個メチル基がついてるか)に関係なく、WDR5はH3に結合することも報告されている。つまり、WDR5のH3認識においては、H3のK4me2ではなく、A1、R2、T3の3残基が最も重要であると考えることができる。H3との結合によって、WDR5はそれほど大きな構造変化は起こらない。結合部位付近の微妙な変化を挙げるならば、Phe133とPhe263の芳香族基が回転して、R2のグアニジングループを挟むための留め金状の構造を形成している点である。また、Ile305とLeu321が、それぞれR2、T3とファンデルワールス結合を形成することによりH3ペプチドに向かってわずかに動いている。

closeup
(Fig.2) WDR5-H3ペプチド複合体
closeup closeup
(Fig.3) 結合部位ズームアップ (Fig.4) 結合部位の相互作用模式図

タンパク質構造データバンク(PDB)

参考文献

原論文

  • Couture, J.F. Collazo, E. Trievel, R.C.; "Molecular recognition of histone H3 by the WD40 protein WDR5."; Nat.Struct.Mol.Biol.; (2006) 13:698-703 PubMed:16829960.

その他

著者: 伊東 純一


English version:PDB:2H13