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PDB:2BDW

タンパク質名

Ca2+/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼ-II(CaMKII)

生物種

線虫

生物学的役割

プロテインキナーゼはタンパク質にリン酸基を付加する酵素である。タンパク質はリン酸化されることにより、酵素活性、細胞内局在、他の分子との親和性などが変化する。Ca2+/カルモジュリン(CaM)依存性プロテインキナーゼ(CaMK)は、Ca2+/カルモジュリン複合体により活性化されるプロテインキナーゼである。CaMKの中でも、CaMKIIは脳内のタンパク質の1-2%を占めるタンパク質で、神経伝達物質の分泌、転写因子の制御、グリコーゲン代謝など様々な場面で働いている。

CaMKII単量体は、N末端側のキナーゼドメイン、調節ドメイン、会合ドメインの3つのドメインから構成され、12量体のホロ酵素を形成する。CaMKIIは、他のCaMKと同じように活性化反応が終わっても活性化が長続き(リン酸化を記憶)する性質を持つ。この性質は2段階の活性化機構により説明される。Ca2+/CaM複合体が結合していない時には、まず、キナーゼドメインは調節ドメインによる自己抑制を受けているが、Ca2+/CaM複合体が調節ドメインに結合することで、この自己抑制を解除する。この自己抑制の解除は、キナーゼドメインを開放してキナーゼ活性を持たせるだけでなく、調節ドメインのスレオニン残基をキナーゼドメイン内から開放してリン酸化の標的としている。続いて、開放されたスレオニン残基がCa2+/CaMが結合した状態にある隣のキナーゼドメインによりリン酸化される。このリン酸化により、Ca2+/CaM複合体が無くてもキナーゼドメインは調節ドメインから開放された活性化状態は持続する。よって、細胞内Ca2+濃度が高いときは活性化状態が伝播していき、リン酸化が保持される。逆に、Ca2+濃度が低いときにはCaMK2のスレオニン残基は脱リン酸化される。

立体構造の特徴

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Rosenbergらは、2量体CaMKIIの結晶構造を決定し、この2量体が6回対称に並んだ12量体ホロ酵素モデルを提唱した。これにより、誤ったリン酸化の伝播を防ぐ自己抑制機構が明らかになった。不活性化時のCaMKIIは、coiled-coil構造の調節ドメインを介してホモ2量体を形成する。このとき、調節ドメインがキナーゼドメインの孔にはまった構造をしていて、キナーゼ活性は抑制され、調節ドメインのスレオニン残基もリン酸化されない。ここで、キナーゼドメインが調節ドメインから外れても、2分子のCaMKIIは調節ドメインを介して反対側にあって、キナーゼドメインとスレオニン残基が離れているのでリン酸化は起こらない。また、調節ドメインどうしの結合が外れても、それぞれのキナーゼドメインは調節ドメインによって自己抑制を受けているのでリン酸化は起こらない。このように調節ドメインのcoiled-coil構造がCaMKIIの自己抑制機構の鍵になっている。

"CaMKII_dimer" (図1)CaMKIIのキナーゼドメインと調節ドメイン。調節ドメインの中にカルシウムイオン/カルモジュリンが結合する残基がある。会合ドメインは示されていない。

タンパク質構造データバンク(PDB)

参考文献

原論文

  • Rosenberg, O.S. Deindl, S. Sung, R.-J. Nairn, A.C. Kuriyan, J.; "Structure of the Autoinhibited Kinase Domain of CaMKII and SAXS Analysis of the Holoenzyme"; Cell (Cambridge,Mass.); (2005) 123:849-860 PubMed:16325579.

その他

著者: 稲生 大輔


English version:PDB:2BDW