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PDB:1XTC

タンパク質名

コレラ毒素

生物種

コレラ菌

生物学的役割

過去、細菌による毒性感染病により広範囲にわたって伝染病が引き起こされてきた。中世には細菌の一種(Yersinia pestis、ペスト菌)によって伝染病が発生し、その臨床的症状から黒死病と呼ばれた鼠けい腺ペストにより約2年間で当時のヨーロッパ人口の約半分の人が亡くなった。Corynebacterium diphtheriaeによるジフテリアも細菌による伝染病の一例である。多くの場合、これらの細菌はジフテリアに対する効果的なワクチンが開発されたこと、あるいは衛生面の向上により細菌の温床となる環境を排除したことによってほぼ撲滅された。しかしながら、とくに第三世界で粗末な衛生条件のために未だに病原性細菌が氾濫し続けている。そういった細菌はときに生物兵器として用いるため意図的に保持されることもあった。ビブリオコレラはそういった病原性細菌の一つであり、この細菌にかかるとコレラと呼ばれる伝染病にかかってしまう。ひとたびビブリオコレラに汚染された水を飲むとこの細菌は消化器官内で増殖し、コレラトキシンと呼ばれる強力な毒素を放出する。この毒素は消化器官の上皮細胞表面に結合する。結合した毒素は化学的に切断され、切断された毒素の一部が細胞内部へ入っていく。いったん細胞内へ入るとこの毒素断片はGTP結合蛋白質のADPリボシル化を触媒し、正常な細胞周期を乱す。 コレラの症状は軽い場合が多いが、深刻な場合には大量の水とナトリウムが消化器官に放出されて毎時6リットルもの水分が流れ出てしまうほどの下痢を引き起こしてしまう。下痢により水分と塩分が大量に流出してしまうと過度の脱水症状に陥り、適切な治療が施されないと死に至ることもある。  

立体構造の特徴

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コレラトキシンはAB5タイプの毒素である。Aタイプサブユニットが1つ、Bタイプサブユニットが5つで構成される。5つのBタイプサブユニットは5量体のリングのように並んでおり、その表面には細胞表面のある種の糖鎖への結合部位がある。その反対側にはAサブユニットが結合している。Aサブユニットは2つの部分からできている。実際の触媒反応を行うA1とBサブユニット5量体との結合を担う短いポリペプチドのA2である。A1とA2とをつなぐペプチドはペプチダーゼによって切断され、その後A1とA2はジスルフィド結合(S-S結合)によってつながれるのであるが、細胞に入るのに先立ってこのジスルフィド結合が切断される。こうしてA1サブユニットは細胞膜を通って細胞内へと入っていくジフテリアトキシンもまたコレラトキシンと同じような方法で細胞死を引き起こすのであるが、これとは異なった構造を持っている。コレラトキシンはABタイプで細胞表面の糖鎖への結合部位はただ一つのみである。

タンパク質構造データバンク(PDB)

参考文献

原論文

  • Zhang, R.G. Scott, D.L. Westbrook, M.L. Nance, S. Spangler, B.D. Shipley, G.G. Westbrook, E.M.; "The three-dimensional crystal structure of cholera toxin."; J. Mol. Biol.; (1995) 251:563-573 PubMed:7658473.

その他

著者:Arno Paehler 訳者:前田 将司


English version:PDB:1XTC