RSS

PDB:1WC8

タンパク質名

ゴルジ体局在化因子TRAPP中のBet3p蛋白質

生物種

マウス(ハツカネズミ)

生物学的役割

細胞膜を挟んだ蛋白質と他の高分子を輸送する仕組みは、複雑なプロセスをもつ。細胞の外へ輸送されなければならない蛋白質は、小胞体、或いはもっと簡単に”ER”と呼ばれる特別な領域で合成される。まず、リボソームはペプチド鎖を作り、そのペプチド鎖は小胞体に差し込まれる。小胞体はそこで小胞に包まれる。そして、これら小胞はゴルジ複合体やゴルジ装置などと呼ばれる別の細胞小器官へ運ばれる。ゴルジ体は平らなものを積み重ねたもので、幅が1マイクロメーターの円盤状で、細胞膜に付着している。小胞体-ゴルジ体間輸送をされた蛋白質は、ゴルジ細網組織で融合する。コンパートメントの中の蛋白質は、さらに修飾を受ける。それらの中には、ゴルジの反対側へうまく輸送されるものもある。そこで、蛋白質は細胞膜内へ送られたり、細胞膜を越えて細胞膜外へ送られるために、再び包み込まれたりする。しかし、今のところ、ゴルジ細網組織の働きは、よく分かっていない。

立体構造の特徴

1wc81wc8_x1wc8_y

ここに示される分子は、輸送蛋白質粒子(TRAPP)の構成部分であるBet3pで、ゴルジ体内への輸送やゴルジ体を通り越す輸送に関して重要な役割をする多蛋白質複合体である。Bet3pの構造は、ゴルジ体へのTRAPPの局在性機構の有効なヒントを与えてくれる。全体のフォールドは、4つのαへリックスとβシートで構成されている。分子をよく観察してみると、明らかになった二つの例外的な特徴があった。一つは、平らでプラスに帯電した表面である。その電荷は、1サブユニットあたり、7つのArgとLysの塩基性残基から成っている。膜二重層を形成している脂質のマイナスに帯電した先端との静電相互作用によって、そのような表面は、細胞膜にBet3pを付着させるための最適な“磁石”となる。残基Lys13とLys84は、この付着過程において決定的であると考えられる。二番目の例外的特徴は、α2、α3、α4へリックスで構成された中央疎水性チャンネルである。それは、蛋白質の内側へ細く、深く突き抜けている。チャンネルの疎水特性は、炭化水素分子をしっかりと固定するポイントとなる。これらの特徴は、Bet3pがゴルジ膜を認識する方法を説明できる。即ち、帯電した平らな分子表面は、TRAPP複合体を細胞膜へ強く引っ張る。この平らな分子表面と膜との相互作用は、がっちりと性的に結合するほど強いものではない。そのためその複合体は、適切な炭化水素部分を見つけるまで、動的に二次元脂質二重層を探し求める。その後、疎水性チャンネルの空洞に突き刺さり、Bet3pを細胞壁に固定する。ゴルジ膜にはそのような“アンカー鎖”が多くあり、TRAPP複合体はそのアンカー鎖によりゴルジ膜を認識していると思われる。TRAPPが集積するのが、細胞膜に付着する前か後か、未だ明らかではない。また、Bet3pは、他のTRAPPサブユニットの存在を無視して結合ができる可能性もある。

タンパク質構造データバンク(PDB)

参考文献

原論文

  • Kim, Y.-G. Sohn, E.J. Seo, J. Lee, K.-J. Lee, H.-S. Hwang, I. Whiteway, M. Sacher, M. Oh, B.-H.; "Crystal Structure of Bet3 Reveals a Novel Mechanism for Golgi Localization of Tethering Factor Trapp"; Nature Struct. Biol.; (2005) 12:38-45 PubMed:15608655.

その他

著者:Rossen Apostolov 訳者:鎌田 知佐 監修:中村 春木


English version:PDB:1WC8