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PDB:1WAP

タンパク質名

trp-RNA 結合 転写減衰タンパク質 (トリプトファンとの複合体)

生物種

枯草菌

生物学的役割

生物を構成するすべての細胞は、生命を維持するためのすべての情報を DNA として持っており、体を作ったり、環境に反応したりしている。体内のどの位置に細胞が位置するかによって、それぞれの細胞は異なる種類のタンパク質を適切な量だけ合成(発現)する。どのタンパク質が発現するべきか、またどれだけの量が必要か、を調節するために、精巧な仕組みが存在する。タンパク質の量もまた環境に対応している。あるタンパク質が必要なときには、タンパク質を生産する遺伝子は活性化される(ON 状態)。一方、そのタンパク質が細胞内に十分なときには、その遺伝子は不活性化される(OFF 状態)。遺伝子の ONとOFFを制御するために、調節タンパク質が働く。例えば、細菌の場合には、2つのトリプトファン分子が結合した「トリプトファン抑制タンパク質」と呼ばれる調節タンパク質が、オペレーターと呼ばれるDNA領域に結合し、トリプトファン生合成のための酵素の生産を阻害する。つまり、細胞内にトリプトファンが十分に存在する場合には、トリプトファン生合成のための酵素の発現は停止される。一方、トリプトファンが十分でない場合には、トリプトファン分子が結合していないトリプトファン抑制タンパク質はDNAに結合せず、トリプトファン生合成のための酵素の発現を許可する。トリプトファン抑制タンパク質の立体構造変化に注目すると、2分子のトリプトファン分子の結合は、DNA(オペレーター)を認識するための2本のへリックスの間の距離を大きくし、この抑制タンパク質がオペレーターに強くフィットすることを促している。

立体構造の特徴

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ここに示した構造もまた、トリプトファン分子依存型の調節タンパク質(枯草菌)で、トリプトファン生合成のための酵素の発現を制御している。この制御タンパク質はまた、構造遺伝子に先立って転写されるmRNAにも依存して働く。そこで、このタンパク質は「トリプトファン、RNA結合 転写減衰タンパク質;TRAP」と呼ばれ、この調節タンパク質は、トリプトファン分子とmRNAの2つの要素によって二重に制御されていることを意味する。トリプトファン分子とmRNAがTRAPに結合するだけ十分に存在する場合には、トリプトファン生合成のための酵素の発現は停止される。この構造は、TRAPとトリプトファン分子との複合体のものである。中央部に大きな穴をもつドーナツ状の構造を示し、それぞれが7本の逆平行βシートで構成された11個の同じ繰り返し単位(セグメント)で構築されている。11個のトリプトファン分子は隣接するセグメントの溝にはまっている。mRNAのU/GAGの11回繰り返し部分が、11個のトリプトファンと結合したTRAPと結合するという生化学的な証拠から、mRNA分子はこの調節タンパク質の片側の面に結合するのではないか、という仮説が立てられる。そのようにして活性化された調節タンパク質とDNA分子の間の、構造的な情報が待たれる。

タンパク質構造データバンク(PDB)

参考文献

原論文

  • Antson, A.A. Otridge, J. Brzozowski, A.M. Dodson, E.J. Dodson, G.G. Wilson, K.S. Smith, T.M. Yang, M. Kurecki, T. Gollnick, P.; "The structure of trp RNA-binding attenuation protein."; Nature; (1995) 374:693-700 PubMed:7715723.

その他

著者: 野村幸代


English version:PDB:1WAP