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PDB:1QLX

タンパク質名

主要プリオンタンパク質前駆体

生物種

ヒト

生物学的役割

クロイツフェルト−ヤコブ病(Creutzfeld-Jacob disease:CJD)とその関連病は1920年代に最初に発見され、その病名はこの病気を研究していた2人のドイツ人神経科学者、 CreutzfeldとJacobにちなんで名づけられた。この病気が羊の病気であるスクレイピーと関連性があることはずっと後になってから明らかになった。スクレイピー自体は18世紀から知られていた病気である。この病気は脳を侵す病気であり、患者は体が麻痺してしまいうまく動けない、認知能力が低下してしまうなどの病状を示すほか、最終的には死に至る。ニューギニア島の食人部族についての研究からクールーと呼ばれる同じような病気が報告され、この病気が人肉を食することで伝わっていくことが発見された。典型的な感染体であるウイルスは一般的に紫外線照射によってそのDNAに損傷を受け、活動に障害を受ける。ところがスクレイピーは紫外線に抵抗性を持っていたため、これを引き起こす感染体は核酸を含むものではないと考えられた。その後Prusinerの研究により、プリオンタンパク(Prion Protein:PrP)がこの病気を引き起こす原因となっていることが強く示唆された。

立体構造の特徴

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プリオンタンパクは2つの異なる形状で存在する。1つ目は通常の細胞型で、PrPc(cはcellularの意味)として知られている。もう一方は病原型で、PrPscすなわちスクレイピー(scrapie)プリオンタンパクとして知られる。PrPcは通常型でαへリックスに富み、プロテアーゼによって容易に分解される。 ここで示している構造もこちらのタイプで、3つのαらせんと1組の逆平行βシートを持っている。

一方のPrPscはβシートに富んだ構造を持っていて、界面活性剤に不溶でプロテアーゼによる分解も受けにくい。構造面での違い以外にはこの2つは化学的には同一とみなされている。PrPcは神経に付随して見られ、脳の活性と関連性があると考えられている。PrPscは凝集して脳内で斑点状に蓄積する。この凝集物のために脳機能が次第に低下し、最終的には死に至る。そのようなことはそれ自体それほど珍しいことではない。一つ例を挙げると、ヘモグロビンの点突然変異ではヘモグロビンの凝集と鎌形赤血球症を引き起こすものがある。この病気は遺伝性であり、次世代に伝わることもあれば伝わらないこともある。プリオンタンパクにおいて特筆すべきはPrPscが感染力を持っていて、このタンパク質は通常のPrPcタンパクを病原性のPrPscタンパクに変えてしまうことである。病原性プリオンタンパクによる病気にはこのタンパク質の構造が関わっている。ウシとヒトのプリオンタンパクの全体構造が似ていることから、牛海綿状脳症(Bovine Spongiform Encephalopathy:BSE)に感染したウシの肉を食べることでヒトがクロイツフェルト−ヤコブ病にかかってしまうのではないかという推測が広まっている。

タンパク質構造データバンク(PDB)

参考文献

原論文

  • Zahn, R. Liu, A. Luhrs, T. Riek, R. von Schroetter, C. Lopez Garcia, F. Billeter, M. Calzolai, L. Wider, G. Wuthrich, K.; "NMR solution structure of the human prion protein."; Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.; (2000) 97:145-150 PubMed:10618385.

その他

著者: Arno Paehler  訳者:前田 将司


English version:PDB:1QLX