RSS

PDB:1ERK

タンパク質名

MAPキナーゼ ERK2

生物種

ドブネズミ(ラット、Rattus norvegicus)

生物学的役割

MAPキナーゼ(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ)は、発がん・細胞増殖に関係するさまざまな因子によって活性化される蛋白質リン酸化酵素である。これらの酵素は、単量体として機能を発揮し、触媒作用を行うサブユニットのみで構成されている。MAPキナーゼ ERK1、ERK2は、多くの細胞増殖、分化を調節するシグナルの伝達を行うチロシンキナーゼ情報伝達経路における主要なメンバーの一員である。この経路において、RasやRafなどのがん原遺伝子から発現した蛋白質によって活性化されたERK1、ERK2は、次の伝達相手である転写因子や膜蛋白質をリン酸化し、情報を伝達する。それゆえ、MAPキナーゼERK1、ERK2は、その機能から、がんやアルツハイマー病などの病気に対する治療法のターゲットとなることが期待されている。 酵素の活性化には、ERK2 の主要な二つのアミノ酸Tyr 185とThr 183が、チロシンキナーゼとセリン-トレオニンキナーゼの両方の機能を持つ「セリン-トレオニン-チロシンキナーゼ」によってリン酸化される必要がある。この二つのアミノ酸の両方がリン酸化されたとき酵素活性は最大となる。片方だけリン酸化では、活性は最大値の1%以下と非常に低い。またリン酸加水分解酵素による脱リン酸化で不活性化されることも示されている。

立体構造の特徴

1erk1erk_x1erk_y

リン酸基が転移された活性型に続いて、ERK2の不活性型(非リン酸基転移型)の立体構造が決定された。これら二つの構造の比較によって、ERK2が活性化される際にある構造変化が起こることが明らかにされた。ERK2は二つのドメインからなるが、不活性型ではこれらのドメインが約15度離れるような回転が起こり、活性型に比べてお互いに離れた構造をとっている。さらに、ERK2がリン酸基を転移する相手(基質)の結合部位がTyr 185 によってブロックされていることが示された。このように、MAPキナーゼERK2の活性化において、ドメインの回転といった全体的な構造変化と基質結合部位をブロックするという活性アミノ酸の局所的な構造変化の双方が起こることが明らかにされた。

タンパク質構造データバンク(PDB)

参考文献

原論文

  • Zhang, F. Strand, A. Robbins, D. Cobb, M.H. Goldsmith, E.J.; "Atomic structure of the MAP kinase ERK2 at 2.3 Angstroms resolution."; Nature; (1994) 367:704-711 PubMed:8107865.

その他

著者: 土屋 裕子


English version:PDB:1ERK