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PDB:1E3G

タンパク質名

アンドロゲン受容体

生物種

ヒト(Homo sapiens)

生物学的役割

ヒトの体のような多細胞生物にとっては体内のさまざまな組織で起こる化学プロセスが共同化していることは重要なことである。したがって、細胞は他の細胞とコミュニケーションをとり、シグナルを交換することができなくてはならないが、細胞はこういったことを化学物質によって行っているのである。このようなシグナルには3つの種類がある。1つ目は個々の細胞内あるいは自身の表面の受容体との相互作用によって起こる自己分泌シグナリング、2つ目は近隣の細胞に対する傍分泌、3つ目は血中に分泌した化学物質が血流に乗って他の組織の細胞へと運ばれる内分泌である。内分泌はホルモンと呼ばれる化学物質によって行われる。ホルモンは2つのクラスに分けられる。1つ目は蛋白質自身あるいはペプチドやアミノ酸である。2つ目はステロイドと呼ばれる疎水性の分子である。ステロイドは疎水性分子であるために容易に細胞膜を通り抜けて細胞内外を動く。これらの分子の役割は遺伝子発現を調節するスイッチとしてはたらくことであり、核内レセプターあるいは核内ホルモンレセプター(nuclear hormone receptor:NHR)と呼ばれる蛋白質をターゲットにしている。NHRはDNA結合部位(DNA binding domain:DBD)とリガンド結合部位(ligand binding domain:LBD)という、2つの機能的に異なるドメインからできている。ホルモンはLDBに結合することでその3次元構造を変え、この構造変化によってDBDの構造も変化する。DBDの構造によって遺伝子が発現されるか、されないかが決まるのである。

立体構造の特徴

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ここではヒトのアンドロゲンレセプターのLBDとメトリボロン(R1881)という化合物の複合体の構造を示す。R1881はそれ自体ステロイドではないがその構造がプロゲステロンに非常によく似ている化合物である。このホルモンによって特に男性の性に関連する遺伝子の発現が調節される。アンドロゲンレセプターの機能異常によりさまざまな病気が引き起こされるほか、前立腺ガンの引き金にもなる。ここで見せるLDBは主としてαへリックスからできており、コンパクトに収まっている。R1881はその性質のとおり、LDBの中の奥深くに入り込んでいる。蛋白質は通常その外側に面する部分は親水性であり(膜蛋白質を除く)、蛋白質内部は疎水性である。したがってR1881のような疎水性分子は蛋白質内部の疎水性環境に収まるのに適しているのである。NHRは病気治療の新薬開発のために薬品工業の分野から大きな関心を持たれている分子である。NHRの活性をコントロールすることで遺伝子発現をコントロールし、病気の進行を直接コントロールしてしまおうというもくろみである。

タンパク質構造データバンク(PDB)

参考文献

原論文

  • Matias, P.M. Donner, P. Coelho, R. Thomaz, M. Peixoto, C. Macedo, S. Otto, N. Joschko, S. Scholz, P. Wegg, A. Basler, S. Schafer, M. Egner, U. Carrondo, M.A.; "Structural evidence for ligand specificity in the binding domain of the human androgen receptor. Implications for pathogenic gene mutations."; J.Biol.Chem.; (2000) 275:26164-26171 PubMed:10840043.

その他

著者:Arno Paehler 訳者:前田 将司


English version:PDB:1E3G