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PDB:1CMA

タンパク質名

Metリプレッサー/オペレーター複合体

生物種

大腸菌(Escherichia coli)

生物学的役割

大腸菌内のメチオニン生合成系の遺伝子の発現はリガンド活性化型の met リプレッサーによって制御されている。メチオニンリプレッサーは、トリプトファンリプレッサーなどとは異なり、コリプレッサーとしてアミノ酸そのものではなく、さらにその代謝産物であるS-アデノシルメチオニン (SAM) との複合体を作り、メチオニン生合成経路の遺伝子産物である自分自身の遺伝子 (metJ) やメチオニンや SAM の生合成に関与する遺伝子の転写を抑制する。このリプレッサーは(AGACGTCT) と相同性の高い8塩基対のユニットである met box が複数(2つから5つ)直列の繰り返したオペレーターに協調的に結合する。

立体構造の特徴

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リプレッサー-オペレータ複合体の結晶構造中ではリプレッサーは対称的なホモ二量体の状態で、二つの met box のそれぞれに結合している。そして、二量体を形成したリプレッサー同士は対称的に配置されていて、疎水的な相互作用で逆平行のαヘリックス (A-ヘリックス) で結合している。この相互作用により、複数の met box への協調的な結合が達成されている。二量体中の単量体どうしは隣接する逆平行のβストランド2本で結合し、さらにそれを DNA の主溝に挿入させている。原核生物のリプレッサーの DNA 認識部位は一般にヘリックス-ターン-ヘリックス (HTH) モチーフをもつか、或いは met リプレッサーの認識部位と相同性が高い。この met リプレッサーの立体構造が解かれるまでは、原核生物の HTH モチーフや真核生物の Zink-finger モチーフなどの DNA の主溝にαヘリックスが刺さったような構造が DNA 認識部位として知られており、この構造は β ストランドを利用した認識部位として初めての報告であった。配列特異性は主に β ストランドの側鎖と主溝の塩基の端との間の水素結合によって引き起こされている。また、二つの met box の境目の CTAG 配列では、T-A の2ヌクレオチド間が余分に曲がることにより位置を変えたリン酸基とリプレッサーの側鎖が結合し間接的に配列を読み取っている。すなわち、この T-A という塩基配列部分が他の配列よりも曲がりやすく、この曲がりがリプレッサーとの結合に必要である。塩基とリプレッサー側鎖との直接の相互作用は無いが、T-A を A-T や G-C に変えると親和性が弱くなる。複合体中では DNA は B 型であるが、各 met box の中心で主溝の方へ約 25 オングストローム折れ曲がっており、B 型の DNA の理想的な主溝と副溝の幅がそれぞれ11.7 および 5.7 オングストロームあるのに対して、主溝は 9.4 オングストロームに縮まり副溝は 8.3 オングストロームに広がっている。SAM 分子は各モノマーに対して一つずつリプレッサーの DNA 結合部位から離れた表面で結合し、正に帯電した硫黄原子が B ヘリックスの C 末端側に位置している。SAM の結合によるリプレッサーの大きな構造変化は起こらないが、オペレーターへの親和性が大きく向上する。

タンパク質構造データバンク(PDB)

参考文献

原論文

  • Somers, W.S. Phillips, S.E.; ";Crystal structure of the met repressor-operator complex at 2.8 Angstroms resolution: DNA recognition by beta-strands;"; Nature; (1992) 359:387-393 PubMed:1406951.

その他

  • [[UniProt:METJ_ECOLI ]]

著者: 松田 知己


English version:PDB:1CMA